第8章
 襲撃! 深海の女帝

 モスクワの郊外にある十階建てのビル。ここがユーラシア連邦軍、ロシア第一方面軍総司令部
である。
 その最上階にある執務室には、二人の人物がいた。
 一人は、ウェーブのかかった青い髪が特徴的な美女。その青い髪によって隠された右の目は
深く傷ついており、眼としての役割を果たしていない。
 この隻眼の美女の名は、レヴァスト・キルナイト。数週間前、ギガフロートを襲い、かつての同僚
たちを葬り去った、元ディプレクターのエースパイロット。ダンやステファニーと同じ、サードユニ
オンが主催する『ゲーム』のプレイヤーの一人である。
 彼女の視線の先には、一人の男がいた。執務室の豪華な椅子に腰を下ろした初老の男性。
眉間に刻まれた深いしわが、この男の歩んできた人生が苦悩に満ちたものである事、そして、現
在もまだ、この男が苦悩の中にいる事を教えてくれる。
 初老の男性は、視線をレヴァストに向けた。その眼は深い悲しみに満ちていた。
「軍の手配は済んだ。東アジアの連中を納得させるのには骨が折れたがな。明朝にも出撃でき
るだろう。それでいいのか?」
「ええ、ありがとう。感謝するわ、ヴィクター・ハルトマン中将」
 レヴァストは、わざと男のフルネームと階級を口にした。それは「それ程の地位にあるくせに、
私なんかに協力するなんて」という皮肉である。
 だが、ハルトマンは怒りもしなかったし、動揺を見せる様子も無い。侮辱も皮肉も今の彼には通
じない。全てがどうでもいい事だったからだ。
 何の反応も見せないハルトマンに、レヴァストは少し不機嫌になった。からかい甲斐の無い男
だ。
 ヴィクター・ハルトマン。ユーラシア連邦所属の軍人であり、階級は中将。前大戦時は陸軍少
将として参戦、ヨーロッパ南部戦線の指揮を担当した。その冷静な判断と、情け容赦の無い攻
撃から『アイスブレイン』と呼ばれ、ザフトから恐れられたキレ者。
 だが、それも昔の話。今の彼は、軍の中枢を握る立場にありながら、無気力な日々を過ごして
いる。
「ならば、ここにもう用は無いだろう。さっさと行け。そして、二度と私の前に姿を現すな」
 レヴァストに対しても、素っ気ない態度を取る。その態度が、レヴァストを更に不機嫌にさせる…
…と思われたのだが、
「ふふふふふ……」
 彼女は笑っていた。それは相手を軽蔑し、見下した『嘲りの笑い』だ。
「二度と現われるな、というのは無理な話ね。私はこのゲームに勝ち残りたい。その為なら、何で
も利用する。貴方の力もね」
「……なるほど。お前にとって、私は勝ち残るための『武器』というわけか」
 ため息をつくハルトマンに、レヴァストはクスクスと笑った答える。
「ええ、そうよ。貴方は私の武器、役に立つ道具よ」
 ユーラシア軍の重鎮であるハルトマンの権力は、レヴァストにとっては最高の『武器』となる。レ
ヴァストはハルトマンを手放すつもりはなかった。
 そうだと分かっているのに、そして本人からもそう言われているのに、ハルトマンはレヴァストに
反論しようとはしなかった。何もかも諦めたように、深いため息をつく。
「もういい。行きたまえ」
 椅子に深く腰を沈めるハルトマン。レヴァストは彼を嘲るように微笑む。それから彼の望みどお
り、執務室の扉を開け、部屋を出た。そして、扉を閉じる直前、再び微笑み、
「それでは、ごきげんよう。お父様」
 と恭しく一礼して、扉を閉じた。
 一人になったハルトマンは、今まで以上に深いため息をついた。
「……バカな女だ。いや、バカなのは私も同じか」
 一体、どこで何を間違えてしまったのだろう? あの女の母親を愛して、妻とした事か? 大戦
前、コーディネイターである二人の身を案じて、二人をプラントに避難させた事か? いや、恐ら
く、
「あの女と親子になってしまった事そのものが、間違いなのかもしれんな……」
 ハルトマンは再度ため息をついた。ため息をつく度に、彼の眉間のしわは深くなっていった。



 インド洋上空。雲ひとつ無い青い空を、見えない艦が二隻、飛んでいる。
 空母のような広い甲板を持つ艦たちの名は、ハルヒノ・ファクトリーとゴールデン・ゲート・ブリッ
ジ。人の目にも機械の目にも映らない二隻の艦は、悠々と空を飛んでいた。
 行き先はヨーロッパ、フランス地方。花の都と呼ばれ、欧州屈指の大都市として繁栄を誇る町
パリ。先日、ノーフェイスから通信が入り、この町にサンライトの剣《シャイニング・エッジ》の製作
者がいる事を教えてくれたのだ。
 これからの戦いには、サンライト最強の武器といわれている《シャイニング・エッジ》の力が必要
だ。一刻も早くその封印を解かねばならないが、封印解除のパスワードを知っているのは《シャイ
ニング・エッジ》の生みの親であるカイン・メドッソという男のみ。サンライトの真の力を解
放するため、ダン達はパリを目指す事にした。
 その進路は、インド洋を横断し、アフリカに上陸。そのまま北上し、ヨーロッパに向かうというコ
ースである。大陸沿いではなく海の上を飛んで行くのは、こちらの方が比較的警戒が薄いから
だ。少し遠回りだが、安全ではある。
 安全ではあるが、時間は掛かるし、暇である。乗員たちはそれぞれ余暇を過ごしていた。
 艦の後部にあるトレーニングルーム。部屋の扉が開き、中からダン・ツルギが出て来た。薄手
のシャツもズボンも汗で湿っている。どうやら相当激しいトレーニングをしていたようだ。
「ふう……」
 止め処なく流れ落ちる汗を、タオルで拭いながら歩く。喉の渇きを癒すため、ダンは食堂にや
って来た。
「あら、こんにちは」
 食堂には先客がいた。ステファニー・ケリオンだ。正確には彼女がいるのは食堂ではなく、食
堂の厨房だった。ガスコンロの前に立ち、やかんで湯を沸かしている。
「何を作っているんだ?」
「料理じゃないわ。飲み物よ。美味しいわよ。多分」
「多分?」
「ちょっとクセが強いのよ。でも、本当に美味しいのよ。飲んでみる?」
「後でな。今は、熱いのは遠慮しておく」
 ダンも厨房に入り、冷蔵庫のドアを開ける。ミネラルウォーターが入った小型のペットボトルを
取り出し、コップにその中身を注ぐ。そして、よく冷えたミネラルウォーターを、一気に喉に流し込
む。
「……ふう」
 渇いた喉が一瞬で潤う。心地よい瞬間だ。
「随分と頑張っているみたいね」
 ステファニーが尋ねる。その視線はガスコンロの方を向いたままだ。
「ああ。俺はまだまだ弱いからな。基礎体力ぐらいはアップさせておかないと」
「その心がけは立派だわ。でも、あまり頑張り過ぎないようにね。過ぎたるは及ばざるが如し、よ」
「何だ、その言葉は?」
「東洋のことわざよ。何事も程々が一番、という意味」
 鍋の中の湯が、泡を生み出し始めた。最初の泡が消えたところで、ステファニーはガスの火を
止めた。そして、やかんの湯を、用意しておいた保温機能付きのポットと、三つのティーカップの
中に注ぎ込む。
「そのお湯を飲むのか?」
「カップを暖めているのよ。こうすれば、お茶が冷めにくくなるわ」
「なるほど。あんたは色々な事を知っているんだな。俺は自分の事もよく知らないのに」
 ダンには過去の記憶が無い。失われた記憶を取り戻すため、彼は過酷なゲームに挑んでい
る。
「ダン君は、昔の記憶を取り戻す為に戦っているのね」
「ああ。俺は俺がどこの誰なのか知りたい。だからこの戦いは、絶対に負けられない」
「私と手を組んだのも、この戦いに勝つ為よね?」
「そうだ」
 そう言ってダンは水を飲む。それが最後の一口だった。一リットルサイズのペットボトルの中は
空になってしまった。
「でも、私なんかと手を組んでもいいのかしら?」
 ステファニーの視線は、ポットからダンの顔に移っていた。その眼は怪しい輝きを放っている。
「どういう意味だ?」
「私が貴方を裏切るかもしれない、という事よ。油断しているところを後ろから、とは考えなかった
の?」
 微笑むステファニー。顔は笑っているが、その言動は油断の出来ない雰囲気を感じさせる。
 常人ならば逃げ出しそうな異質なプレッシャー。だが、ダンは平然と、
「ああ。全然考えなかった」
 と答えた。何の捻りも魂胆も無い、純粋な答え。これにはステファニーの方が驚いてしまった。
「呆れたわね。豪気というか、呑気というか」
「俺はあんたを信じているからな」
 あっさりとそう言うダンに、ステファニーは更に驚き、そして呆れた。
「貴方が私を信じても、私が貴方を信じているとは限らないわよ?」
「そうだな。でも、あんたは悪い奴じゃない。信じてもいいと思っている」
「私が悪い奴じゃない、って、どうして分かるの?」
「前に戦った時、あんたはいつでも俺を殺す事が出来た。でも、あんたは俺を殺さなかった」
「それは、ゲームがまだ始まっていなかったからよ」
「ああ。だが、あんたはルールを無視して、俺を殺す事も出来たはずだ。でも、あんたは俺を殺
さなかった。あんたは律儀で優しい奴だ。だから信じる。それでいいだろう?」
 ダンの答えに迷いは無かった。本気で言っているようだ。
 感心すべきなのか、呆れるべきなのか、ステファニーは少し困惑した。だが、不快ではなかっ
た。



 ハルヒノ・ファクトリーのMS格納庫。現在、この格納庫にはダンのサンライトガンダムとオルガ
のデュエルダガー、ギアボルトのバスターダガーとルーヴェのジン、計四機のMSが置かれてい
る。ちなみにルーヴェのジンは、大気圏内での使用を考えて、重量のかかるハイマニューバで
はなく、ノーマル装備に換装されている。外見は通常のジンと同じだか、スラスターなどに改造が
施されており、通常のジンより機動力は向上している。
 オケアノス級の艦は全てがコンピューターによって制御されており、MSの整備も機械が行なっ
てくれる。通常の戦艦などとは違い、格納庫には人の姿がまったく無く、先端に様々な道具を付
けた大型アームや小型アームが忙しく動いている。少し不気味だ。
 いや、よく見れば格納庫は無人ではなかった。アーム類以上に忙しく動き回っている人影があ
る。春緋野整備工房の社長令嬢であり、同社で二番目の腕を誇っていた整備士、ミナ・ハルヒノ
だ。顔に少し油が付いているが、本人は気が付いていないようだ。
 ミナはギアボルトのバスターダガーを整備していた。専用の高性能狙撃ライフルを機体から取
り外し、地に下ろして、部品をチェック。磨耗したり、損傷している部品の取替えをする。機械が
整備した部分もチェックする。
 パイロットがMSに命を預けて戦っている以上、その整備を疎かにする事は出来ない。人殺し
の道具であるMSを整備するのはあまり好きではないが、仕事には絶対に手を抜かない。整備
士としての誇りである。
 黙々と自分の仕事をするミナ。そんな一生懸命な彼女に近づく影が二つ。
「よお、ミナ」
「頑張っているわね。感心するわ」
「えっ!?」
 ミナは手を止め、声をかけてきた人物たちの方に振り返った。そこには金と黒の瞳を持つ少年
と、プラチナプロンドの美女がいた。少年は保温機能付きのポットを手に持ち、女性はティーカッ
プを三つ、お盆の上に乗せて持っていた。
「ダン、ステファニーさん……」
 どうしてこの二人がここにいるのだろう? どうしてこの二人が『一緒に』いるのだろう? 少し混
乱するミナに、ダンが声をかける。
「どうしたんだ、ミナ? 疲れが脳に回ったのか?」
「ダン君、もう少し言葉を選びなさい。ミナちゃん、頑張っている整備士さんに、私からの差し入
れよ。夕食前だから、お腹の膨れる物じゃないけど」
 そう言ってステファニーは、ミナの右隣に腰を下ろした。ダンも、ミナの左隣に腰を下ろした。
 ステファニーは、お盆を下に置いた。そして、ダンから渡されたポットを傾け、三つのカップに
明るく美しい紅色の液体を注ぎ込む。紅茶だ。甘さとほろ苦さが同居した素晴らしい香りが、格
納庫中に広がる。
「ストレートティーだけどいいかしら? ミルクティーの方がいいのなら、入れ直してくるけど」
「い、いえ! 大丈夫です、私、ストレートティーの方が好きですから!」
 これは本当の事だ。
「そう、良かった。砂糖はどれくらい?」
 ステファニーは、ポケットから紙のスティックを数本取り出した。砂糖の詰まったシュガースティ
ックだ。
「そ、それじゃあ、私は二本、お願いします」
「ダン君は?」
「一本でいい。苦かったら、後で足す」
 ステファニーは苦笑して、二人のリクエストに応えた。ティーカップに指定されたとおりの量の砂
糖を入れて、小さなスプーンでゆっくりとかき混ぜる。そして、
「はい、どうぞ」
 砂糖をかき混ぜ終えた後、ダンとミナにティーカップを差し出す。
「ああ」
「そ、それじゃあ、いただきます」
 ダンとミナはカップを手に取った。カップはほんのりと暖かかった。紅茶が冷めないよう、ここに
持ってくる前に暖めておいたのだと分かり、その心遣いが、ミナは少し嬉しかった。カップの淵に
口をつけ、紅茶を喉に流し込む。
「………………美味しい」
 素直な感想がミナの口から漏れた。メーカー品や、自分や母が入れた紅茶とは全然違う。香り
も、味も、信じられないほど素晴らしいものだった。
「うん。確かにこれは美味いな」
 ダンも賞賛する。ステファニーは嬉しそうに微笑み、
「セイロンのウヴァっていうお茶よ。少しクセがあるから気に入ってもらえるかどうか不安だったけ
ど良かったわ」
 と言って、自分のティーカップにも砂糖を入れて(スティックは一本)、紅茶を飲んだ。彼女の立
ち振る舞いには一片の隙も無く、かつ優雅で、気品のようなものを感じさせる。容姿の美しさと相
成って、おとぎ話に出て来る姫君を思わせる。
 ミナはステファニーに気付かれぬよう、そっとため息をついた。同じ『女性』なのに、自分とは全
然違う。違いすぎる。こんな素敵な人が、どうして………。
「うー……うん!」
 落ち込みそうな心に活を入れるように、ミナは一気に紅茶を飲んだ。独特の香りが、口や鼻の
中に広がる。
「豪快だな。こういういい紅茶は、じっくり味わうものだと思っていたのだが、違うのか?」
 女心を知らないダンの発言に、ステファニーは苦笑し、ミナは更に落ち込んだ。
 ダンとステファニーも紅茶を飲み終えた。ダンはトレーニングを再開すると言って格納庫から出
て行ったが、ステファニーは格納庫に残った。
「ふーん……」
 ステファニーは格納庫の中を見回す。整備中の四機のMSを見て、
「ここのMSの整備、みんな貴方がしているの? 一人で?」
 と尋ねる。
「え、ええ。でも、機械がほとんどやってくれるから、私はチェックするだけですけど……」
 謙遜するミナ。ステファニーは微笑んで、
「機械の力も借りているでしょうけど、貴方の力も大きいわよ。ここのMSは、よく手入れされてい
る。機械だけの整備では、ここまで丁寧には出来ない。貴方、いい整備士ね」
 と褒めてくれた。ミナは顔を赤くして、激しく首を横に振る。
「そ、そんな事は! 私なんて、全然、まだまだだし……」
「MSを動かすのはパイロット。でも、彼らが活躍できるのも、MSを見てくれている整備士がいる
からこそ。いい整備士がいる艦やMSは強いわ」
 そう言ってステファニーは、ふと遠い目をする。
「貴方みたいな整備士がいれば、きっとダン君も強くなる。そうすれば……」
 美しいが、悲しい目だった。見ている者の心も締め付けられるような目。
 その目を見たミナの心が揺れる。そして、疑問が湧き上がる。この人はどうしてここにいるんだ
ろう? どうしてダンに拘るのだろう?
「ステファニーさん、どうしてあなたは、ダンに力を貸してくれるんですか?」
 堪え切れず、ミナは質問をした。
「どうしてって、手を組んだのなら力を貸すのは当然でしょう?」
「い、いえ、その、そういう意味じゃなくて、ど、どうしてダンと手を組んだのかなー、って。だって、
他にもこのゲームに参加している人はいるし、その人たちはダンより強いみたいだし……」
 ミナの疑問はもっともである。ゲームに参加している六人の中で、ダンの実力は最弱のレベル
だ。乗機であるサンライトも、最強の武器である《シャイニング・エッジ》は封印されている。手を組
むメリットが見当たらない。
 しばしの沈黙。
 それからステファニーは優しく微笑み、口を開いた。
「そうね。確かにダン君は弱い。でも、信じられる人間だわ。他の四人とは違ってね」
 数日前の戦い、ステファニーは「まだゲームが始まっていない」という理由で戦いを止めた。ダ
ンもそれに応じた。
 だが、他の四人がダンの立場に置かれたら、絶対に応じないだろう。戦いを止める振りをして、
騙し討ちをする者もいると思われる。
 そんな連中と手を組んでも、危なくて背中を任せる事は出来ない。だが、ダンは違う。彼はたと
え自分が傷つき、倒れるような事になっても、卑怯な手は使わないし、裏切らないだろう。だから
信じられる。背中を任せる事が出来る。
「そう、ダン君は信頼できる人間だわ。それに、今は弱くても、彼はきっと強くなる。ミナちゃんみ
たいな、いい整備士もついているしね」
「わ、私なんて、そんな……」
「謙遜しなくてもいいわ。ミナちゃんはきっと、凄い整備士になるわ。私が保証する」
 自信満々に言うステファニー。
「あ、そ、そんな……あはは」
 褒められて、顔を赤くするミナ。少し浮かれてしまう。だが、そのせいでステファニーが小声で
呟いた一言を聞き逃してしまった。
「そう、私を殺してくれるぐらいに強くなってもらわないとね」



 太陽が真上を過ぎた頃、ダン達が乗る二隻の艦は、ミラージュコロイドを解除して、海上に着
水した。
 これは、オケアノスという艦の最大の弱点であり欠点だった。艦全体を覆うミラージュコロイドの
使用時間に制限があるのだ。主要回路の冷却などで、一日三時間はコロイドを展開出来なくな
ってしまう。
 こうなっては、武装を何一つ持たない艦が動き回るのは危険だ。艦を人目の付かない所で静
止させて、敵が来ない事を祈りながら、時間が過ぎるのを待つ。
 危険な時間帯ではあるが、同時に暇でもある。索敵以外にする事が何も無い。迂闊に動けば
こちらの居所を知られてしまうので、MSによる偵察なども出来ない。
 暇を持て余したダン達は、ブリッジに集まった。だが、その中にステファニーの姿は無かった。
荷物を取りに、モーターボートで自分の艦に戻ったのだ。
 鬼の居ぬ間に、という訳ではないが、一同の話題は自然にステファニーの事になった。
「あの女、本当に大丈夫なのか?」
 と、オルガがダンに訊く。戦いの中で生きてきた彼は、警戒心も人一倍強かった。
「大丈夫か、って何がだ?」
「裏切らないか、って事だよ。油断した途端、後ろからバッサリ!ってな事にならないかと思って
な」
「あ……」
 あの人はそんな事をする人じゃない。そう思ったミナは口を挟もうとするが、彼女より先に、
「それは無い」
 とダンが断言した。
「なぜそう言える? あの女は、お前を殺そうとしたんだぞ?」
「だが、俺は殺されなかった」
「それは、あの女がお前を利用するためだろう?」
「そうだろうな。でも、それは俺に利用価値がある限りは、俺を裏切らないという事でもあるんじゃ
ないか?」
 ダンの言葉に、ギアボルトとルーヴェが頷く。
「確かにそのとおりですね。彼女の実力なら、いつでもダン君を殺せますし」
「弱い者同士が一時的に手を組んで、自分たちより強い敵を倒す。バトルロイヤルでは常識的
な戦法ですね」
 二人の言うとおりである。ダンは頷いた後、
「それに正直、俺は腹の探り合いは苦手だ。あの女は悪い奴じゃない。だから、今は信じる。そ
れでいいだろう?」
 と言った。ダンらしい答えであり、ミナは少し嬉しかった。
 だが、それでもミナはステファニーを信じ切れていなかった。いや、悪い人じゃないのは分か
る。けれど、なぜか好きになれない。なぜ?
 自分の気持ちが分からず、沈み込むミナ。ダンは話を続ける。
「俺たちは世界中を敵にしている。このゲームを勝ち抜くためには、あの女の力が必要だ。俺一
人だけでは恐らく、いや、絶対に勝てないだろうからな」
 先日、ダン達はディプレクターによって、全世界指名手配となった。正確には指名手配になっ
たのは『ギガフロートやプラント、オーブを襲った正体不明のMSたち』なのだが、そのMSの中
にダンのサンライトや、ステファニーのサンダービーナスも含まれていた。
 他にもハリケーンジュピターや、ダンがまだ遭遇していない二機のMS、アクアマーキュリーと
マーズフレアも指名手配された。ダン達は世界中を敵に回してしまったのだ。
 確かにダンも無罪というわけではない。オーブでアスランのネオストライク2号機などを撃墜して
いるのだ。それでも全世界指名手配というのは少しやりすぎのような気もするが、リ・ザフトの再決
起によって世界中がピリピリしている今の状況では仕方ないだろう。
 とにかく、状況は最悪である。こうなったら、味方は多い方がいい。
 それにステファニーは断言していた。他の四人はいずれも手強い。ダンの力では絶対に勝て
ない、と。ならば、勝つための努力を惜しんではならない。
 ステファニーとの戦いで自分がまだまだ未熟である事を知ったダンは、その言葉を素直に受け
入れた。厳しいトレーニングを積み、オルガたちを相手に模擬戦を繰り返している。もっとも、あ
まり成果は上がっていなかったが。
「俺たちがゲームに勝ち残るためには、彼女の力が必要だ。だから…」
「信じるって言うのか? やれやれ、楽観的というか、希望的観測というか」
 オルガは呆れたように言う。ダンの意見は分かるが、それでも納得し切れなかった。生きるか
死ぬかの傭兵世界で戦ってきた彼にとって、ダンの考えは甘すぎる気がしたのだ。それを注意
しようとしたその時、
「!」
 ブリッジに敵の襲来を告げる警報音が鳴り響く。レーダーには五つの艦影が映っていた。



 ハルヒノ・ファクトリーらに迫る戦艦は、全てユーラシア連邦の艦だった。
 本来、インド洋は東アジア共和国や南アフリカ統一機構などの領海である。ユーラシアの艦が
入る事は基本的には出来ない。だが、『アイスブレイン』ハルトマンは、その優れた政治手腕で、
自軍の艦隊の一部をインド洋に派遣する事を東アジアなどに承諾させた。
 艦隊の派遣理由は、『先日シベリアにあるユーラシアの軍事基地を襲った謎のMSがインド洋
に潜伏しているという情報があり、それを確認し、殲滅するため』というものである。シベリア基地
の壊滅は事実であり、艦隊の兵士たちは基地と共に散った同胞たちの仇を取るために戦おうと
している。
 この事件の犯人はもちろんダン達ではない。真犯人はレヴァストなのだが、ハルトマンはそれ
を承知の上で艦隊を送り込んだのだ。味方を欺き、ダンたちを倒すために。
 五隻の戦艦は、二隻のオケアノスを射程距離に捉えた。旗艦の艦長が、戦闘体勢への移行を
指示し、他の艦もそれに従う。横一列に並び、攻撃準備を行なう。
 ミラージュコロイドの再展開まで、まだ一時間以上かかる。ダンとオルガ、ギアボルト、ルーヴェ
の四人はそれぞれMSに乗り、ハルヒノ・ファクトリーの広い甲板に立つ。
 ユーラシア軍の戦艦からもMSが発進された。機種はストライクダガーと、ランチャーパックを装
備した105ダガー。戦艦と一緒に遠距離から砲撃してくるつもりらしい。
 恐らく水中からもMS部隊が送り込まれているだろう。デュエルダガーもバスターダガーもジン
も水中戦には向いていない。何とか対応できるのはサンライトだけだが、装備面で不安が残る。
「ダン、お前は水の中を頼む。武器はバズーカとかにしておけ。水中じゃビームは役に立たない
からな」
「分かった」
 オルガからの指示にダンは頷く。サンライトの武器をビームショットライフルから大口径のバズ
ーカとミサイルランチャーに取り替えて、水中に潜る。
「頑張ってね、ダン。オルガさんたちも気を付けてください!」
 ブリッジから通信を送るミナ。その後、彼女はゴールデン・ゲート・ブリッジの方を見た。敵の接
近には気が付いているはずなのに、艦は動かないし、サンダービーナスも姿を現さない。何度も
通信を送っているのだが、まったく応答が無い。
「そんな、どうして……?」
 ミナは、先程飲んだ紅茶の香りと、ステファニーの優しい笑顔を思い出した。味方を見捨てるよ
うな人には見えなかったのだが、まさか!?



 水中に潜ったサンライトは、早速、敵影を捉えた。水中にはオルガの読みどおり、ディープフォ
ビドゥンの部隊が潜んでいた。
 数は八。思っていたよりは少ないが、相手は厳しい訓練を積んだ正規の軍人だ。サンライトが
水中用MSではない事も考えると、決して油断は出来ない。ダンは気を引き締める。そして、
「くらえっ!」
 先制攻撃としてバズーカ砲を発射。初弾を敵の群れのど真ん中に打ち込む。
 これは外れたが、弾を避けた際の敵MSの動きから、その回避パターンを推測する。そして、
まずは敵の数を減らすため、最も動きの鈍かった機体に狙いを定める。
「そこっ!」
 二弾目を発射。これは見事に命中し、敵を破壊する。強烈な爆音と振動がコクピットにまで伝
わってくるが、ダンは怯まなかった。敵はまだいるのだ。
「あと七機!」
 サンライトが持っているもう一つの武器、ミサイルランチャーから魚雷が放たれる。ディープフォ
ビドゥンたちも魚雷で応戦。魚雷同士が衝突し、爆音と白泡が水中を覆う。その泡に隠れて、デ
ィープフォビドゥン部隊は体勢を立て直そうとするが、
「そこだ!」
 ダンはその隙を逃さなかった。バズーカ砲を連続発射、二機のディープフォビドゥンを粉砕し
た。
 オーブで『銀狼』アレックス・サンダルフォンの部隊に敗北してから、ダンは対MS部隊用の戦
術を研究していた。更に、多数の敵との戦いに慣れているオルガたちから助言や訓練を受け、
その能力は格段に進歩していた。
 一対多数の戦いの場合、まずは指揮官を潰す。それが出来ない場合は、弱い敵から倒して、
とにかく数を減らす。隙は出来るのを待つのではなく、こちらで作ってやる。敵の隙を絶対に見
逃さず、確実に仕留める……。オルガが教えたこれらの戦術は、戦術の基本であり、かつ実行
するのは非常に困難な方法である。それをダンは忠実に、そして正確にやってみせた。その手
腕は、
「な、何だ、あの白いMSは!? 訓練を受けた俺たちを、たった一機で追い詰めるなんて…
…!」
 と、プロのパイロットである軍人たちさえも驚かせるほどだった。八機のディープフォビドゥンは
ことごとく落とされ、残るは隊長機のみ。
 しかし、さすがは隊長機。他の機体とはスピードも回避能力も違う。バズーカの弾も、魚雷も、
サンライトの攻撃は全てかわされてしまった。
「もらった!」
 相手の弾が尽きた事を知った隊長は、槍を手に突っ込んできた。遠距離からの攻撃ではかわ
される。確実に仕留めるため、接近戦を挑んできたのだ。
 だが、その判断は大きな誤りであった。サンライトは弾の尽きたバズーカ砲とミサイルランチャ
ーを捨て、腰にある《シャイニング・エッジ》を取り外した。まだ鞘から抜く事は出来ないが、今は
これで充分だ。
 ディープフォビドゥン、接近。槍がサンライトの顔に突き刺さる直前、
「だああああああっ!」
 鞘に収められた《シャイニング・エッジ》が真横に振るわれる。その直前、サンライトの腹部にあ
る五角形の回路《サンバスク》が強烈に輝いた。その光は暗い海中を照らし出し、サンライトに新
たな力を与えた。
 強大なパワーによって振るわれた一撃。それは水中用MSであるディープフォビドゥンでさえ
避けきれないほどのスピードとなり、ディープフォビドゥンの胴体を破砕した。
 これはつい先日、オルガとの模擬戦中に発見された、サンライトの隠された機能である。《サン
バスク》に蓄積されていた電気を機体に注ぎ込み、瞬間的に機体の限界以上のパワーを生み
出す。人間でいう『火事場のバカ力』のようなものだ。機体にかかる負担も大きいので乱用は出
来ないが、それでも頼もしい『武器』だ。
 一対八、しかも絶対的に不利な戦場での戦いで、ダンは勝利した。喜んでいるかと思いきや、
ダンの顔に喜びの色は無かった。今まで以上に緊張し、鋭い眼をしている。ここ数日の間に鍛え
られた、戦士としての勘が、新たな敵が近づいてくる事を感じ取っていた。
「…………来る!」
 サンライトのレーダーが敵影を捉える直前、ダンは叫んだ。彼の勘は当たっていた。
 新たな敵は三機。ディープフォビドゥンが二機と、見たことも無い新型MSが一機。紫に染めら
れた謎のMSはサンライトより一回り大きく、背部には巨大なブースターを装備している。その手
には、これまた巨大な三叉の槍を持ち、異様な迫力を醸し出している。
 だが、ダンの目に何よりも印象深く映ったのは、紫のMSの顔と右腕だ。アンテナは一本だけ
だが、どことなくサンライトやサンダービーナスに似た顔。そして、サンダービーナスの右足同
様、白と青と赤に塗り割れられた、本体とは違いすぎる『右腕』。間違いない、このMSは!
「なかなかやるじゃない。前座とはいえ、八機のディープフォビドゥンを五分足らずで片付けるな
んて」
 紫のMSから通信が送られてきた。女の声だが、ミナやステファニーの声より少し低めで、男性
的な印象を感じさせる声だ。
「あんたの事はノーフェイスから聞いているわよ、ダン・ツルギ。出会ったばかりで悪いけど、ここ
で死んでもらうわ。あんたがこのゲームの脱落者第一号よ」
 それは宣戦布告だった。紫のMSは槍を構え、刃先をサンライトの向ける。
「ああ、自己紹介がまだだったわね。私はレヴァスト・キルナイト。このMSはアクアマーキュリー。
あんたを地獄に送る深海の死神よ!」
 アクアマーキュリーが突撃してきた。速い! 供として連れて来た二機のディープフォビドゥンも
置き去りにするほどのスピードだ。そして、巨大な三叉槍《クリュサオル》の刃がサンライトの腹に
迫る。
「!」
 考えるより先に体が動いた。ダンは素早く乗機を動かして、アクアマーキュリーの攻撃をかわし
た。それは奇跡と言ってもいい動きだった。ダンは知らないが、《クリュサオル》の刃は、サンダー
ビーナスのアーマーシュナイダーやアンカーと同じ仕組みになっている。刃が命中すると同時に
相手に電気を流し込み、強烈な電流で一時的にTP装甲を無効化するのだ。あと一秒、いや、
ゼロコンマ数秒遅かったら、サンライトの腹部には三つの穴が開いていただろう。
 一方、攻撃をかわされたレヴァストだったが、それほど落ち込んではいなかった。逆に、不適な
笑みを浮かべている。
「思ったより速いわね。でも、水中でこのアクアマーキュリーに勝つ事は出来ない。誰にも、絶対
にね」
 レヴァストの言うとおりだった。それはダンにも分かった。本能と感覚で分かってしまった。この
MSには絶対に勝てない、と。
「ぐ……」
 唾を飲み込むダン。地獄はまだ、始まったばかりだった。



 海中と同じく、海上の戦いも熾烈を極めていた。
 戦艦上から砲撃してくるストライクダガーや105ダガーは、ギアボルトの正確無比な射撃によっ
て、ことごとく沈黙した。遠距離戦は不利と見たのか、エールパックを装備した105ダガー部隊
がハルヒノ・ファクトリーの甲板に乗り込んできた。数は十。
 これにオルガのデュエルダガー・フォルテストラが応戦。こちらの戦力の要であるギアボルトの
バスターダガーを守るため、獅子奮迅の活躍を見せる。
「ちっ、図々しいんだよ、お前ら!」
 ビームサーベルでダガーの翼と腕をまとめて切り落とし、右肩の砲で別のダガーの頭部を破壊
する。続いてビームライフルを発射。敵の足を打ち抜き、動きを止める。
「絶対に通さない!」
 ルーヴェのジンも負けてはいない。銃を乱射して、数で勝るダガー部隊を見事に食い止めて
いる。
 戦況はオルガたちが優勢だった。業を煮やしたのか、隊長機らしきダガーが前に出る。狙い
はオルガのデュエルダガーだ。
「俺とやる気か? いい度胸じゃねえか!」
 先手はエールパックを装備した隊長機ダガーだ。ビームライフルを連射。正確な射撃だ。そし
て速い。
「ちっ!」
 オルガはかわすが、完全にはかわし切れなかった。最後のビームがデュエルダガーの右肩の
強化装甲(フォルテストラ)を打ち抜いた。
「くそっ!」
 右肩が爆発する寸前、オルガは操縦席の隅にある小さなスイッチを押す。直後に右腕と胴体
の接続部が小さな爆発を起こし、右腕は胴体から強制的に切り離された。
 その直後に右腕は大爆発した。オルガのデュエルダガーは少し下がり、態勢を整える。
「ちっ、あの野郎、やってくれるじゃねえか!」
 腕を一本失ってしまったが、オルガの判断は間違っていない。切り離すのがもう少し遅かった
ら、右腕の爆発によってデュエルダガー本体も大きなダメージを負っていただろう。
「ふん、面白い。だったら、久々に暴れさせてもらうぜ!」
 強敵の出現に、心を躍らせるオルガ。一方、
「なかなかの反応だ。それに思い切りのいいパイロットだ。こいつは思ったより手強いぞ」
 MS部隊の隊長、モーガン・シュバリエもまた、目の前の相手の力量に驚いていた。
「ただのチンピラ傭兵ではないようだな。それなら、全力で叩き潰す!」
 お互いが只者でない事を見抜き、二人のパイロットはその闘争心を高ぶらせた。そして、同時
に愛機のビームサーベルを抜き、
「はああああっ!」
「行くぞおっ!」
 壮絶な切り合いを始める。



 海上で、海中で、激闘が繰り広げられている中、ただ一人、動かない女がいた。ゴールデン・
ゲート・ブリッジのMS格納庫、金色のMSのコクピットに座る美女、ステファニー・ケリオン。その
顔は相変わらず美しいが、感情らしきものが何も浮かんでいない。まるで仮面のような顔だった。
『ダン・ツルギとレヴァスト・キルナイト。私は見極めなければならない。ダン君に私を殺すほどの
力と可能性があるのか、それとも……』
 彼女の願いは唯一つ。その願いを叶えるためならば、彼女は悪魔にもなる覚悟であった。

(2004・7/24掲載)

次回予告
 ぶつかり合う戦士たち。その輝きは美しくも儚い。
 かつて、その輝きの中にいた二人の女は、それぞれ違う道を選んだ。戦いを愛する道
と、戦いを拒む道。
 戦いを愛するという事は、自分以外を敵とする事。戦いを拒むという事は、自分が生きる
事も拒絶するという事。
 まったく違う道を歩く二人の女は、ダンにとって敵となるのか、それとも…?

 次回、機動戦士ガンダムSEED鏡伝2、絶哀の破壊神、
 「憎しみは海より深く」
 反撃の稲妻を放て、サンダービーナス。

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特別出演キャラ紹介
 モーガン・シュバリエ(SEED−MSVより)

 地球連合軍、ユーラシア連邦軍大尉。前大戦時は38歳、鏡伝2では40歳。
 「月下の狂犬」と呼ばれている、地球軍屈指のエースパイロット。
 以前はユーラシアの戦車部隊に所属。夜間戦闘を得意としたことから、この異名がついた。ま
た「狂犬」とは、一見無謀な作戦を立案するためについた名だったが、実際には優れた知略家
であり、部下からの信頼は厚かった。
 しかし、アフリカ戦線において、「砂漠の虎」ことバルトフェルドの指揮するMS部隊に大敗。戦
いの主役がMSに移ることを予感する。
 その後、大西洋連邦に出向し(実際には左遷に近い)、ストライクダガーのテストパイロットとして
活躍。戦車部隊所属時に培った戦術を利用し、高い評価を受けた。連合内におけるMS運用
の戦略基礎のほとんどは彼の立案による。
 実戦においては、ダガーの上位機種であり、先行生産された105ダガーを愛機にしていた。
大戦末期にガンバレル操作の適正があることが分かり、ムウに渡されるはずだったガンバレル・
パックを受領。同パックを装備したダガーを操縦し、ボアズ攻防戦などで活躍した。
(CV:大川透)